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たモデル式から算出した移動量(地域引力)の計算値に比べて、実際の移動量は三宅島を除いて軒並み大きく、交流人口の盛んな地域であるといえる。中でも近年観光として盛んな式根島、神津島の実際の移動量は、計算上の値を大きく上回るものである。
ここで、大島など一連の航路と結ばれていない三宅島、御蔵島とを仮想航路により結ぶことにより、リスク改善を検討する。人口減少の傾向を示している両島に将来見込まれる移動量をみてみると(Fig.-5)、両島とも大島との距離は大きいものの高い地域間引力が得られ、ネットワークの可能性が確認された。また、人口の安定が見られる神津島は両島に近いことから、航路開設による交流人口の増加が期待されるが、仮想航路をみてみると、三宅島とは15000人、八丈島とは7000人程度の移動人口増が見込まれる。集約性についてみてみると、大島と新島の値が飛び抜けて高い。御蔵島は現在、三宅島との間に航路が開設されているのみであるが、計算値より高い移動量が確認されており、減少率は他の離島とほぼ同じである。よって、本研究では伊豆諸島全体のリスク(人口問題)改善のために、1、大島(三宅島は中心性を考慮した上で除外)を拠点としたネットワーク、2、三宅島と大島、三宅島と神津島との間の2本の航路開設、の2点を提案する。今後の整備の方向性に対する評価モデルをFig.-6に示す。これはF1=(F(地域間引力)/(人口*365))=1 注13)、社会特性ハザード=地域特性ハザード、の直線をもとに離島整備の方向性を4つに分類したものである。その結果、本土間距離が200m以内の離島群(G1)を架橋推進離島、次にF1<1かつ社会特性、立地特性ハザードともに高い離島群(G2)を移住推進型離島とし、高島(長崎)を含む5島を選定した。3番目にF1<1、かつ立地特性のみ低い離島群(G3)を完結型離島とし、父島(東京)など9島を選定した。最後に上記のどのグループにも属さない離島群(G4)を従来整備の推進離島とした。

Table.-5 Izu-Islands and Others(1)

316-1.gif

316-2.gif

Fig.-5 Izu-Islands and Others(2)

5. 結論
本研究では、離島地域における今後の整備の方向性を,現在の離島偶々が抱える問題性から評価するため、問題性を物理量に置き換え把握を行った。それにより現在、問題性を一定の尺度により評価することができた。その中で、離島特有の立地特性が抱える障害(ハザード)は、本来最も改善すべき課題として認識され、政策対象とは捉えられがたい事象であった。しかし、本研究の中で、交通基盤の整備状況を併せた形で評価することにより、政策対象としての価値を見いだせた。
離島における問題性(ハザード)について評価すると以下のようになる。
?立地特性が社会特性にもたらす影響として、地理6分類毎に評価を行ったが、医療など島内で整備すべき基盤は、孤立型離島など、日常生活の上で本土との関係が図りにくい離島内において、より高いハザードとなっており、地理的条件に大きく影響を受けるハザードと評価できた。一方で、島外通学など地域間の利用が比較的進んだ教育基盤では、立地特性に関わらずリスクに対して相対的に影響の低いハザードとなっている。
?立地、社会の両ハザードは地域間の移動量との間に関連性を持ち、今後の整備の方向性を捉える上での重要な視点と評価された。
以上より、離島地域では内外のもつ問題性を考慮し

 

 

 

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